講  師: 五十嵐 文彦 氏 (いがらし ふみひこ) (民主党政調副会長・民主党埼玉県連顧問)
 1948年東京生まれ。73年東京大学文学部西洋古典学科卒業。時事通信社に入社。国際派の政治部記者として活躍。88年時事通信社退社、フリージャーナリストとなる。同時に五十嵐ふみひこ政経研究所を設立、代表となる。93年埼玉2区より衆議院選立候補、当選。96年埼玉9区より衆議院選立候補するも惜敗。民主党政調副会長、民主党埼玉連顧問。

著書: 『国会がひとめでわかる本』(日東書院)/『選挙のしくみがわかる本』(アスカ出版)/『これが政治改革だ』(けやき出版)/『選挙・選挙・選挙』(竹村出版)/『これが民主党だ』(太陽企画出版)/『大蔵省解体論』(東洋経済新報社)/『ダライ・ラマの微笑』(蝸牛社) など

 今回の市民フォーラムのテーマは、政権を目指す党として避けて通れない「安全保障問題」です。旧民主党結成時には市民政調やプロジェクト2010で独自政策づくりの活発な議論があり、インターネットで情報を入手して勉強させてもらいました。そのプロジェクト2010での安全保障問題に関する議論の中心におられたのが、今日の講師をお願いした五十嵐文彦さんです。[司会・稲見哲男]

[文責・事務局]


    


安全保障の未来像

 日本人は日本の重要な政策課題を官僚任せ、専門家任せにしてきました。安全保障問題を金融問題のように官僚任せにして失敗した二の舞にしてはならないと思います。

 戦前は安全保障問題を軍部に任せてひどいことになりました。戦後も外務省・防衛庁に任せきりであることは同様です。そこで、プロジェクト2010の安保分科会では、政治家、ジャーナリスト、学者などが集まって、安全保障の未来像について自分たちで議論しました。

 そこでの結論は、日米安保体制は確かに重要だが、未来永劫ではない、ということです。


日本は軍事大国か?

 日本は軽武装国だという印象がありますが、実態は世界的な軍事大国です。アジア近隣諸国どころか、軍事交流を深めている勧告の軍人からも脅威だと思われています。これは日本人の実感を大きくずれており注意すべきです。

 日本に侵略の意図がなくても、他国が脅威と感じれば恐怖心から軍事拡張を招き、戦争の原因にもなり得るからです。

 一方、軍事力の内容はいびつです。米国の要求で掃海技術だけ特に優秀だったり、冷戦崩壊後も北海道に大部隊を配備しています。逆に、現在の日本にとって重要な海上警備やテロ対策のための法整備等は遅れています。これらは、米国の要求ばかりを受けて日本の安保対策が考えられた結果なのです。

日本の周辺で戦争は起きるか?

 純軍事的に極東情勢をみてみると、極東ロシア軍は冷戦崩壊後質量共に急速に縮小しています。中国人民解放軍は増強されていますが、物価の上昇を割り引くと軍事費増は大きくなく、装備の近代化も遅れています。むしろ質的には台湾の方が強大だと言えます。

 さて北朝鮮ですが、経済状況から装備や燃料の不足が深刻で、正規軍が行動を起こせるとは到底考えられません。テポドンも性能面から脅威となり得ないでしょう。武装難民も非現実的であり、実際に米国が懸念しているのは本格的な戦争ではなく、特に韓国に対する原発テロだと言われています。

どうなる日米関係

 有事の際、米国は自衛隊を指揮下に入れたいと思っています。外務省・防衛庁も同じで、今回のガイドライン見直しでも米国にどう協力できるかということばかり考えていました。

 ガイドライン自体は必要ですが、行動に入る前に日本側から武力行使以外のオプションを提案する場が必要です。日米安保条約の事前協議でも日本からの提案は一度もありませんでした。それをます活性化すべきなのです。

 私たちが提案した「常時駐留なき日米安保制」は非現実的だと非難されました。しかし、例えば海兵隊の沖縄常駐は不要だと言う米国の安全保障関係者も多いのです。「安保ただ乗り論」についても、日本は米国に基地と高度な整備能力を提案しており、「思いやり予算」まで支出しています。基地や金が提供されるのなら、米国の方から引き上げると言わないのは当然です。このような一方的な日米関係を改め、日米で率直に議論し合う関係をつくるべきです。

軍事論をオープンに

 軍事論をタブー視せず、もっとオープンに議論すべきです。違憲とされてきた集団的自衛権も、多様な選択肢を考える必要があります。また、後方支援は戦闘行為ではない、PKOはPKFと異なり安全である、などというまやかしの議論はやめて、紛争解決のための本当に必要なことを正面から議論すべきです。

 安全保障の根本は日常の隣人関係と同じです。対人関係に冷静さと柔軟性が必要なように、安保にも必要なのです。自分立ちの世界で硬直的な議論をしてきた専門家に任せるのではなく、平和主義の原則に立ち戦争を避けるためにこそ、私たち自らオープンな場で多様な論議をすることが必要っだと思います。

現実的で柔軟な議論を

会場から: 北朝鮮のテポドン再発射問題に日本はどう対応すべきなのでしょうか。

五十嵐: 再発射を、援助を引き出すカードにしたり、他国へのテポドン売り込みに使いたい意図は北側にあるでしょう。しかし、発射を断念させる努力は必要ですが、発射されたとしても過度な制裁措置をとるのではなく、冷静に対応すべきでしょう。

会場から: 中国が台湾に武力行使をするかの制覇あるでしょうか。

五十嵐: それは現実問題としてあり得ないでしょう。ジェスチュアとして過激な態度をとるでしょうが、中国は武力行使を考えておらず、その能力もないと思います。

会場から: 民主党内でこのような安全保障問題に踏み込んだ議論がされていることは、外部からはまったく見えないのですが。

五十嵐: まさに同感で、党内の一致を重視しすぎてタイミングを逃しています。違憲が分かれていても、議論の過程から外部へ積極的に情報発信していくべきです。

稲見: 関係者の尽力で政策論議の場である市民政調が立ち直り、プロジェクト2010も今後活性化するはずです。私も、平和主義の理念を持ちつつ、現実的で柔軟な姿勢で論議に参加していけたらと思います。



    



 市民フォーラム 第4回   21世紀の日本の安全保障  (1999.08.24)