| 講 師: 田中 秀征 氏 (たなか しゅうせい) (元経済企画庁長官・福山大学教授) | |
| 1940年9月30日生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学部卒。1983年衆議院議員初当選。1993年6月新党さきがけを結成、代表代行に。細川政権の発足に伴い、内閣総理大臣特別補佐。第一次橋本内閣で経済企画庁長官。
著書: 『田中秀征の奇跡』/『民権と官権』/『日本連立政治』/『舵を切れ』 |
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今回は自自公政権成立という政局の大きな節目を機に、個別課題に絞ってきたフォーラムの視点と規模を広げで企画しました。
そこで細川政権以来激動する日本政治の中心におられた田中秀征さんに、最近の政治と経済の動向を大局的に論じてもらおうとお願いしたところ、快諾していただきました。
民主党結成に至るまで新しい政治勢力の結集を渇望し模索していた私たちは、田中秀征さんの考え方や行動に注目してきましたが、今日は現在のフリーな立場でさらに鋭く切り込んで頂けると大いに期待しています。〔司会・稲見哲男〕
〔文責・民主党市民フォーラム委員会〕
つい先日の臨海事故をはじめ、最近背筋が寒くなるような事件や事故が多数起きています。
日本の社会全般に途方もない悪や過ちが隠されており、今後も思わぬことから信じがたい問題が突然現れるのではないかと危惧しています。
自分の責任を逃れるため他人の過ちを見て見ぬふりする、さらには人の弱みを握って自分の弱みを隠すような社会の構造になってしまい、社会の緊張感が失われたのではないでしょうか。
現在の自自公政権は、国政レベルまでまさに同じことをしています。
地域振興券を認めることから、国旗・国家法案に賛成してくれるということが満足な議論もなく行われているのです。こんな政権では、問題を先送り、財政バラマキが行われるのは当然です。
また、もたれあいでは明確な政治の方向性を持てるはずもなく、その結果旧来の官僚任せの官僚政治への転換がさらに遠のくことにもなります。
一方、藤井自由党幹事長は自自公政策協議後、軍事力を拠り所とした「普通の国」への展望が開けたと言っています。
私はこの動きを阻止するべくこの数年心血を注ぎましたが、国連常任理事国入りのため戦後日本の積み重ねを簡単に無にしようとしているのです。
このような動きの中、国債に日銀引き受けが浮上してきました。
巨額の財政赤字でバラマキ用の借金を返すあてがなく、高い金利でないと民間が国債を買ってくれないので、日銀に引き受けさせようというのです。
日銀が自分で刷ったお金で国債を買うなら、支出を削減しなくても当面いくらでも借金してバラマキが続けられます。
その結果、あらゆる問題が将来へ先送りされてしまうのです。
もちろん現時点で日銀はこの要求を拒んでいますが、現政権の圧力に日銀が屈するなら、その日は、「日本の命日」として記憶されるべきです。
政治家は、取り返しのつかない破局へと必然的にいたる国債日銀引き受けの重大さを認識するべきです。
小渕さんは加藤紘一さんの経済再生策を、民主党の金融再生案と同様丸呑みにしました。政府による企業の債務処理、設備破棄、人員削減への支援がそれです。
これは、客がこない蕎麦屋の借金を猶予し鍋や食器を売り、店員の解雇を援助するのと同じです。
それでこの店が繁盛するばすはありません。
客が来ないのは蕎麦がまずいからなのです。
むしろ援助することで店主は蕎麦をうまくしようと努力しなくなります。
必要なのは、意欲ある新人に蕎麦屋を任せることです。
既存の蕎麦屋を援助すれば、新規開店などできません。
日本は開業率が極端に低く、全く同じ状況にあります。
既得権を持つ業界、献金を受けている政治家、官僚による規制が新規参入を拒んでいるのです。
この障壁をなくし新たな雇用機会を創出しないと、人員削減で失業が増えるだけです。
自自公政権は時代に祝福されていません。
互いに責任をうやむやにし、問題を先送りする政権は時代が求めていないのです。
現政権は旧勢力が総結集した政権です。
今回の民主党党首選で争点となった憲法ではなく、このような自自公政権の本質こそ問うべきなのです。
それを象徴するのが国債の日銀引き受けへの動きなのです。
時代は必ずそれに対抗する勢力を求めています。
その意味で民主党の責任は重大です。
小渕さんは現在を明治維新、戦後改革に次ぐ第3の革命と呼んでいますが、とんでもない話です。
以前の革命では旧支配層の総退陣によって新しい人材が活躍できたのです。
既存の政治に挑戦している稲見さんも実感されていると思いますが、役割を終えたとはいえ戦後日本を支えたエネルギーが必要です。
しかし、今こそ問題を直視し、根本的な変革を成し遂げなければならないのです。
会場: 私は市議会議員をしているのですが、地域の活動とは無関係に国政が進んでいるように思えてなりません。
田中: 私は自分で地域を歩いて活動してきましたが、忘れられない経験があります。
私の地元の長野は養蚕農家が多いのですが、養蚕業保護の陳情の際に農家の方から「今回の陳情には関わらないで下さい。
私たち自身、日本の養蚕業を保護しても展望がないことがわかっています。
日本の経済復興に貢献できたという誇りで充分なのです。
このことで秀征さんに傷をつけたくない」と言われ、これには涙が出ました。
地域の人々は日本の現状や政策が本来どうあるべきか生活レベルで正しく認識しています。
利権などではなく、この感覚こそ政治家は頼りとすべきなのです。
会場: タクシー業をしているのですが、最近の景気や規制緩和の動きに対して大きな不安を持っています。
田中: 国債増発を伴うような需要喚起政策は問題先送りに過ぎませんが、規制緩和は経済の閉塞状況を打破するために必要です。
短期的には既得権を失うなど痛みも伴いますが、新規開業の増加や新産業の創出によって雇用拡大・景気回復にも結びつき、国民全体の利益にもなるはずです。
もちろん、官僚の抵抗や政治圧力に左右されず全般的な規制緩和を進めるべきであり、環境や安全等に関わる社会的規制はむしろ強化することも必要です。
稲見: 今日の会場からのご質問と田中秀征さんのお答えは、現在地域活動に専念している私も心すべきことだと感じました。
なお最後に一言、今回の民主党党首選にについて、考えが基本的に異なる人は同一政党にいるべきではないと言われますが、考えの相違とは、民主党を終の棲家とし現政権に加わりたいための手段としてしか考えてないのか、という姿勢の相違だと私は理解しています。
逆に個別政策は互いに相違を認め幅広く議論すればより高い次元で統一され、その結果、党の一体感も高まると期待しています。
| 市民フォーラム 第6回 最近の政治と経済 (1999.10.13) |