直近の統計によると日本の完全失業率は4.6%と以前高い水準である、近畿の雇用状況は全国的にも最悪の状態にあります。とりわけホームレスの増加は大阪市において深刻です。これから寒さが厳しくなる時期でもあり、野宿生活を強いられている人々が直面している問題について考えるには絶好の機会だと思います。今日は昨年11月に連合大阪が出したホームレス問題に対する政策提言作成の中心メンバーであった、福原さんにお話をうかがいます。[司会・稲見哲男]
[文責・市民フォーラム]
今日は実態調査で明らかになった大阪市における野宿生活者の現状と、背後にある日本社会の問題と課題について考えていきたいと思います。
日雇い労働者・野宿生活者の現状
昨年私のいる大阪市立大学は市役所の委託で大規模な野宿生活者の実態調査と、市役所の労働者、解放同盟西成支部、学生、市民等の協力を得、実施しました。現在、聞き取り調査を終え報告書を作成中です。調査ではホームレスの市内総数が8660人にのぼっていましたが、淀川河川敷でも野宿生活者が増えているように、現在は1万人を超えていると思われます。他都市は概数ですが、全国で約2万人とステイされるホームレスの半数が大阪市内にいることになります。
野宿生活をする理由は地域ごとに異なります。釜ケ崎では日雇労働のアブレによるものです。大阪市北部では、半数は釜ケ崎での経験がない建設労働者です。残りの2割は他産業のい従事していた人々で、主に下請け下請中小企業のリストラや家庭の問題によって行き場を失った野宿生活者である、増加する傾向にあります。
ホームレスは「異質」な人々ではない
野宿生活者は異質な人々として見られ、また単に怠け者だからそうなるのだと思われがちです。しかし、それは実態が知られていなかいからです。実態調査では、多くの野宿生活者は夜間や早朝に廃品回収などの仕事をしており、野外でも安全な昼間に休むという生活をしています。一般市民には昼間休んでいる姿しか見えないので偏見が生じるのです。野宿生活をせざるを得なくなった原因、そこから抜けだすことを阻んでいるものこそ問題とすべきなのです。
ホームレス問題について最近ではマスコミが取り上げるようになり、企業のリストラが厳しくなって市民の間にも他人ごとではないという意識が生まれています。しかし、しかし、日本では常雇いで家持ち・家族持ちを「普通の生活」と見なし、それと異なった生活をする人々を一般社会から排除する意識は根深いものがあります。日本の社会保障制度も単身者には不利にできており、さらに彼らを排除する結果になっています。
政府・自治体の対応と今後の課題
日本の福祉政策と労働対策には、大きな問題があります。現行政策は自立支援を目的としていません。欧州のような未然にホームレス化を防ぐための失業扶助や職業訓練の制度がなく、日雇)雇用保険が切れると生活保護を受けるこになります。住不定者は生活保護を受けることも困難で、収容保護しかなくなってしまいます。このような状況で、労働意欲が失われ、社会復帰が困難になるのです。自立できなくなった人々が公的扶助を受けることは、人権の観点からはもちろん、財政負担の面からも問題です。
このような現状に対応するため、政府6自治体が今春、『ホームレス問題に対する当面の対応策』を発表しました。個別内容には問題もありますが、大阪市が中心となって国に働きかけを行い、その過程で行政と対立関係にあった団体も積極的に取り組んだことなどは高く評価すげきだと思います。
外国の事例では、フランスで長年行われてきた政策が「社会排除に抗する法」で結実しました。そこでは単なる生活保障だけでなく、移動手段への補助などを通じてホームレスが社会参加し、生きがいを見出すチャンスの提言が言われています。また、国からの援助だけではなく市民レベルでからの社会連帯を強めるため、市民に対しても行動を求めています。外国では日本と比べて寄付金やNPOの役割が大きく、韓国では企業からの支援も大きいと言われています。ホームレス問題に大しては、自分に関係ない一部の人々としての問題ではなく、社会全体に関わ問題として取り組姿勢が必要なのです。
会場から
会場: 報道などからはホームレスになる背景が多様化しているように思えるのですか。
福原: 欧米では若年者が多いのですが、日本でもそうなる兆候があります。また、従来は単身者が多かったのですが、現在はかつて家庭を持っていた人々が増えているようです。
会場: 釜ケ崎の社会医療センターで働いているものです。最近来所者の増加に追われている状態ですが、病気が治っても野宿生活に戻り、また健康を害する例が多くあります。居住権の確保を最優先とすべきではないでしょうか。
福原: まさに個別縦割り的対応ではなく、医療、福祉、住居、雇用の総合的な取り組みが必要です。そのためには地域からの政策的な提言も求められるでしょう。
会場: NPOによる支援活動は?
福原: 大阪では主に釜ケ崎反失業連絡会を中心に地域団体等も加わり釜ケ崎支援機構が設立、NPO法人に認証され、今後の活動が注目されます。また、いくつかの後援で組織ができつつあると聞いています。
会場: 行政の現場では越年の面接基準を緩和するなど対応の改善をしており、さらなる改善のための要望もしていますが、特に自治ル支援が難しいと感じています。
福原: 就労指導とともに、やはり雇用の場の確保が必要です。失対事業は国が拒否していますが、時限的であっても雇用創出は必要であり、長期的には廃品回収の事業化やNPOによる雇用なども考えていくべきでしょう。
稲見: 今日は、ホームレス問題を単なる野宿生活者救済を超えて、「社会的排除」をなくる観点から社会全体の問題として考えるべきだという認識を深めることができました。政府は財政危機にもかかわらず数兆円規模で経済対策を打とうとしていますが、旧来型の大規模公共事業に巨額の金を注ぎ込むのではなく。たとえ額は小さくても働く場・住む場を失った労働者の自立を支援し、社会的な連帯を強いるための政策にもっと資金を用いるべきだと思います。
