今回のフォーラムの講師は、民主党若手衆議院議員でネクスト・キャビネットの社会資本担当大臣を務める前原誠司さんです。総選挙を目前にご多忙な中来て頂きました。民主党は「公共事業コントロール法」の再提出を目指しており、公共事業の問題点とともに法案の解説もお願いしたいと思います。今日は各地でダム建設の中止を求めて運動している環境NGOの方も多く参加されており、活発な議論を期待しています。[司会・稲見哲男]
[文責・市民フォーラム]
なぜ公共事業がこれほど多いのか
日本の労働人口約6000万人の内、なんと650万人、1割以上が建設業に従事しています。建設会社の数も56万社あります。これだけの人々と会社が公共事業に関わり、選挙で政治家を応援するのですが、その背景には公共事業の発注で政治家が果たす大きな役割があります。まず制度として行政が指名する業者の中から受注業者を選定する指名競争入札制度があるのですが、当然指名業者でなければ仕事が取れない。指名業者になるため行政に取り計らってもらおうと政治家に頼むわけです。
指名業者になれば仲間内で談合が行われます。入札の際、上限価格の予定価格を政治家を通じて聞き出し、ある業者が少し下回る価格を提示します。他はそれ以上の価格を提示して持ち回りで落札業者を決めていけば、常に最も高い価格で事業を受注できるわけです。実際に国の直轄事業は予定価格の平均98%で落札され、米国の8割と比べ格段に高い価格となっており、納税者の負担増と引き換えに業者・政治家の利益となるのです。
日本の財政は危機的状況
日本の年間公共投資は、現在50兆円以上(国だけで12兆円)にもなっています。一方、国の財政は破綻状態です。今年度当初予算は85兆円で歳入は49兆円しかありません。36兆円の不足を国債発行で埋め合わせ、国・地方合わせ645兆円という莫大な借金を抱えることになりました。この借金はわずか1年8ヵ月の小渕政権下で116兆円も増えたのです。
しかし、少子高齢化で福祉への需要と負担が今後急増するのは明らかです。今からこんな借金で対応できるはずがありません。にもかかわらず景気対策と称して借金を重ね、公共事業も増やしていますが、それは公共事業が政治家・業者の「カネづる」だからです。
数多い公共事業の問題
民主党は、5年間で2割、10年以内に3割の公共事業を減らすことを公約しています。全体量を減らすのと同時に、先に述べたように談合によって事業単価が高くなっているので、競争原理が働くよう入札制度を改革しなければなりません。
また、現在の公共事業には、環境等に対する影響も含めた事業の費用対効果が考慮されていません。費用対効果を考えれば本四架橋は3つも必要ないし、高速道路料金が高いのも工事費が高く利用も見込めない場所に道路建設が行われているからです。公共事業に投入される財政投融資の70兆円が焦げ付き、内20〜30兆円は道路公団分との推計もあります。
さらに、公共事業はばらばらに計画されています。治水事業としてダム建設を建設省河川局が計画していますが、本来なら山林保全や休耕田活用による保水機能の向上などトータルに考えるべきはずです。道路も、建設省、農道・林道は農水省、通産省ですら原発緊急避難道、と別個に建設されて重複投資が生じています。各省庁・各局が自分たちの権限の及ぶ範囲で事業を行い、省益、局益の維持拡大のため予算獲得に奔走しているのです。
今こそ公共事業コントロール法の制定を
このような状況を変えるため、民主党は「公共事業コントロール法」を提案しています。内容を説明すると、まず社会資本整備の計画を一本化してばらばらの計画開始年度をそろえ、一括して国会がコントロールできるようにします。一定基準以上の個別事業計画や従来は行政の裁量範囲だった具体的実施についても国会の承認を必要とさせ、吉野川第十堰のように住民投票で明確にNOとされた事業すら政治が中止できない状況を改めます。
また、中海干拓など何十年も前に計画され、現在では必要もないのに継続されている事業があります。したがって、長期間未着工・未完成の事業は再評価して必要ないと判断すれば中止し、完成したものも費用対効果や環境への影響を事後的にチェックします。地方でも公共事業に関わる問題は深刻なので、地方自治体にも条例制定を求めます。この他、特定財源を一般財源化し、専用のカネが入るから事業を行うというような状況も改めます。
日本の将来へ必要な財源を確保するため、今こそ「公共事業コントロール法」によって公共事業を変革し、財政を救わなければならないのです。
会場から
会場:公共事業の計画の作成段階からの参加や代替案の検討はどう担保されるのですか。
前原:参加についてはパブリック・コメントという形で保障します。代替案については、発注過程で計画案の公募や提案制度を活性化すべきでしょう。
会場:各地のダム建設反対運動の過程で、建設省の治水政策が根幹から誤っているとみんなが感じるようになっています。今こそ建設省の治水論・利水論に正面から挑むべきです。
前原:治水をダム建設ではなく山林や水田の保全から考えるべきことは、もはや常識となっています。ご指摘の通り普遍的な批判も展開すべきだと思います。
会場:米国では、NGOと政治家が一緒に法律をつくっていったことがダム建設中止の流れを生む大きな原動力となりました。このような手法をもっと生かしてほしいと思います。
会場:これまで政党や議員が、私たちNGOに情緒的反対論者とかイデオロギーのレッテルを貼ってきたため、NGOの側も政治をあてにしなくなったという経緯があります。
会場:大阪府でも3つのダム(1つは和歌山県に計画)が建設されようとしています。環境・財政面から不必要だと調査を行い明らかにしているのですが、実際に反対運動をしている者として、現地の実態をぜひ知って頂きたいと思います。
前原:今のご意見は実に耳の痛い話です。まさに「市民が主役」の民主党であるなら、その姿勢も地域で実際に生活し活動している市民の皆さんとともにあるべきだと思います。
稲見:会場からご意見を多数ありがとうございます。総選挙も目前となり、今回をフォーラムとしては一つの区切りとさせて頂きたいと思います。これまで様々な政策課題について勉強し活発な議論ができました。一部利益の「代弁者」ではなく、市民と政党あるいは市民の皆さん同士を仲立ちし、議論を重ねて政策をともに作り上げていく「代議者」として、ぜひとも国政の場に立って政治への信頼を高めることに貢献できるよう、がんばっていきたいと思います。どうか今後とも皆さんのご支援をお願いいたします。