『 消えた年金記録 』     (2007/05/27)
  

衆議院厚生労働委員会で社保庁改革法案が強行採決されましたが、『消えた年金納付記録』が大問題になっています。

誰の納付かわからない記録が5千万件を上回り、とりわけ、3千万人の年金受給者の年齢帯で2880万件もの記録が宙に浮いていることには正直驚かされます。年金制度への不信感が深刻なものになっています。

私も実務の一端を知っていますが、以前は転職した時、厚生年金から国民年金に変更した時やその逆の時、年金手帳を持参しないと次々に新しい手帳が発行されていました。高齢者になって年金の裁定請求を受けようとしても、全ての年金手帳を持参しないと正確な納付状況がわからないことが往々にありました。

97年に基礎年金番号が一本化したときに、本来「名寄せ」されて全てが統合されていないとおかしいにもかかわらず、前述の件数が放置されてきたのです。

厚生年金は戦前からの制度ですから当然手作業でした。国民年金は1961年から発足しましたが原本は紙の台帳で、納付状況は当初からコンピュータ処理でしたが、カタカナでの入力で漢字は使えませんでした。一括処理といって入力資料を作成し、コンピュータのあるセンター(あるいは業者の下請け)でパンチャーが一件ずつ入力する方式でした。

したがって読み方を間違えますと他人になってしまいます。例えば、イナミテツ「オ」をイナミテツ「ヲ」と一字違っただけで別人になるのです。「ジ」と「ヂ」も違うことになります。転居・転職、氏名・生年月日の入力の誤りなども含めて、個人を特定する住所・氏名・生年月日・性別が一致しないと折角納付した記録がばらばらに存在することになってしまうのです。

政府は『救済法案』を提出し全件を調査すると言っていますが、国民に十分周知せず、また、この10年間、解決の努力を放棄してきたこと自体が問題です。放置されてきたもう一つの原因は、2000年に地方分権に逆行するかたちで、国民年金事務は市町村への機関委任事務から国の事務に変わり、市町村役場、区役所から引き上げられました。市町村には戸籍・戸籍の付表、住民登録や市民税の台帳がありますから、誤りを人海戦術で訂正することも可能ですが、社会保険事務所にはその手段と人員が十分ではありません。国民の信頼回復のため緊急に全国の市町村に協力依頼することも出来ないのです。

私も1970年代に住居表示の変更事務をしたとき、住所が少しだけ違う、名前が一字だけ違うものなどは『近似突合』と言って2段に表示し、どちらが正しいか一件づつ調査した経験があります。現在のコンピュータの進展とソフトの開発によって、最終的には人力で調査することは可能だと考えています。早急に具体の方策を示して、国民に安心感を与える努力が不可欠だと考えます。



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 い な み の ひ と こ と